WCS2016 新システムの紹介と解説

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大きく変更される2016年のWorld Championship Series

2011年のBlizzconにおけるSC2 Invitational、2012年の各国代表、各大陸代表が競った2012WCSを経て、2013年に始まった現行システムのWCSは、2015年にリージョンロックを導入する大きな変更を行った。
そして2016年、WCSはさらなる地域シーン活性化を大きな目的として更に大きなシステム変更を迎える。

Blizzardから2016年のWorld Championship Seriresのシステムが発表された。→こちら Rikapiさんによる翻訳は→こちら
今回の変更点は非常に大きく、2016年のシステム概要はおおまかに以下の形である。

  • WCSは韓国選手向けのWCS Korea Standingと海外選手向けのWCS Circuit Standingの2つに分かれ、全体の賞金額は大きく上昇する。
  • WCS Circuit Standingは最低8つの海外大会とWinter,Spring,Summerの3つのシーズンチャンピオンシップで構成される。それらには一部を除き韓国選手は参加できない。
  • 1年の終わりにはGlobal Playoffが行われ、WCS Korea Standingから8人、WCS Circuit Standingから8人の選手が進出する。。
  • Global Playoffを勝ち抜いた8人がBlizzconで行われるGlobal Finalに進出する。


この記事ではWCS Korea StandingとWCS Circuit Standing、そしてどちらの選手も参加可能なWCS Global Eventの3つについて解説を行い、感想を述べたいと思う。

WCS Circuit Standing

WCS Circuit Standingsは基本的には海外選手向けのWCSシステムであり、以下のような特徴を持つ。

  • 参加できるのはヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、中国、オセアニア/東南アジア/日本、台湾いずれかの地域の市民権もしくはビザを持つプレーヤーである。
  • WCS Circuit Championship,WCS Challenger,WCS Circuit Eventの3つの大会により構成される。それぞれの大会は成績に基づきWCSポイントを付与する。
  • WCS Circuit Chamipionshipの各シーズンの勝者3人とWCSポイントランキングから上位5人がGlobal Playoffに進出する。

まず参加権に関してだが、これは韓国以外に住む海外プレーヤーとビザを有する海外在住の韓国選手(Polt,Hycraなど)が参加できるということを意味する。
この条件は2015年のWCS Premier Leagueの条件とほぼ同じと見て構わない。
また重要な点として、WCSポイントランキングはWCS Circuit内でのみ行われるということになる。WCS Korea Standingsに参加する韓国選手とはポイントの比較は行われない。

WCS Circuit Standingsを構成する3つの大会について解説していく。

WCS Regional Challenger

WCS Regional ChallengerはBlizzardによる公式大会であり、以下のような特徴を持つ。

  • 賞金総額$10,000で争われ、Winter,Spring,Summerの3回が開催予定である。
  • ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、中国、オセアニア/SEA/日本、台湾の6地域それぞれで開催される。
  • 優勝者(EU/NAは2位も)はWCS Circuit Championshipの出場権を得る。それ以外の選手も順位に基いてWCSポイントを得る。

この大会は2015年のWCS Challengerのような役割を果たすと言っていいだろう。各地域でチャンピオンを決め、その選手が後述するWCS Circuit Championshipへの出場権を得る。
日本人選手はオセアニア/SEA/日本リージョンのWCS Regional Challengerを戦うことになる。

WCS Circuit Championship

WCS Circuit ChampionshipはBlizzardによる公式大会であり、以下の様な特徴を持つ。

  • 賞金総額150,000$でWinter,Spring,Summerの3回が開催予定である。
  • 各地域のRegional Challengerを勝ち抜いたプレーヤーとEU,NAサーバー予選を勝ち抜いたプレーヤー、WCSポイントランキング上位のプレーヤーなど32人により争われる。
  • 成績に応じて賞金及びWCSポイントが付与されるほか、優勝したプレーヤーはGlobal Playoffに参加する権利を得る。

WCS Circuit Championshipは2015年でいうWCS Premierと似た役割を果たすと言っていいだろう。ただスタジオで行われていたRo32のグループリーグはまるまる消滅。
参加32人の詳細は、Regional Challengerから8人、EUサーバー予選から8人、AMサーバー予選からを勝ち抜いた6人、開催国予選から2人、WCSポイント上位から8人となっている。
優勝するとポイントに関わらずGlobal Playoffへの参加権を得ることができるなど、非常に重要な大会になるだろう。

WCS Circuit Event

WCS Circuit Eventはサードパーティーが開催するいわゆる「海外大会」であり、以下のような特徴を持つ。

  • 大会の規模に応じてWCS Circuit Event2500と5000の2つが存在する。2500は賞金総額$25,000、5000は賞金総額$50,000である。
  • 参加可能なのはWCS Circuitへの参加権を持つプレーヤーのみである。
  • WCS Circuit Event5000に関しては、WCS Regional Challengerにおける6地域において予選が行われ、勝者は渡航費のサポートを受けることができる。
  • WCS2500イベントはBlizzardの規定を満たすことがでBlizzardの援助を受けWCS5000イベントとなることが可能である。

今までも海外大会でWCSポイントを得ることが可能だったが、2016年からは更に深くWCSシステムに海外大会が関わってくることになる。
2015年には賞金総額$50,000規模の海外大会は2つしかなかったが、2016年は最低でも8回のWCS5000イベントが開催されることが予告されている。Blizzardの援助システムの効果だと思われる。
またこの「海外大会」はWCS Circuitシステムの一部であるため、参加できるのはWCS Circuitの参加権をもつ海外選手+ビザを持つ韓国選手のみである。
WCS Korea Standingでプレーする選手は参加不可能だということも大きな要素と言えるだろう。

筆者の感想

WCS Circuit Standingに関する筆者の考えを述べていく。 2015年に導入したリージョンロックに引き続き、2016年はWCS Regional Challengerの導入や海外大会にも多くの韓国選手が参加できなくなるなど、Blizzardは海外シーンの発展(復活)にかなり力を入れていると見ていいだろう。
SC2は現状韓国選手がシーンをほぼ占拠していることもあり、地域シーンの確立があまりできていない。同じように韓国選手が強いLeague of Legendsでは韓国選手は強さをみせつつも地域シーンが発展し盛り上がっているのとは対象的である。
今回のシステムであればWCS Circuit championshipはもとより海外大会に出場する選手もほとんどが海外選手となり、海外選手が活躍し賞金を得る機会が大きく増える。そのことが地域シーンの確立・発展に繋がっていく可能性は十分にあるだろう。
WCS Circuit Event 5000が各地域の予選を設けたことで、渡航費などの問題で参加ができなかった地域のプレーヤーも海外大会に参加する可能性が増えることも良い点だと言える。特に日本が属するSEA地域にとっては間違いなく朗報だ。
勿論懸念はある。多くの海外大会はEUで行われており、実力もEUプレーヤーのほうが高いと言われることが多い。WCS Challenger賞金の$2000が無くなったこと、更にビザを取得する韓国選手の増加もあり、NAプレーヤーにとってはむしろ状況が悪くなる可能性も無いわけではない。
WCS Circuit Eventがどのくらい行われるのかも気になる所である。SC2の海外大会は年々減少傾向にあるが、今回のシステムでは海外大会の数が大きく選手のプレー機会とシーンの盛り上がりに、そしてWCSシステム自体にも深く影響する。
すでに最低8回の5万ドル級イベントが予告されているが、その他の5万ドル級イベントがどれくらいあるのか、$25000級イベントの有無は…などはまだまだ不透明だ。
また海外大会から多くの韓国選手が消えることは、海外大会への注目度の減少、引いては視聴者の低下、スポンサーの減少…につながらないとも限らない。いかに地域シーンを盛り上げていけるかどうかがこのシステムの鍵となっていくだろう。
韓国選手の人気と強さに頼らないシーンの確立ができるかどうかが勝負となる。

ちなみに日本にとっては悪くない変更だと思われる。Regional Challengerは日本人選手が活躍を目指すにはうってつけの場所であるし、WCS Circuit Event5000へのSEA予選も行われるはずで、上を目指せる機会は間違いなく増えたのではないか。

WCS Korea Standing

WCS Korea Standingは基本的には韓国に暮らす韓国選手のためのWCSシステムであり、以下のような特徴を持つ。

  • 世界中の誰もが参加可能であるが、韓国で開催されるオフライン大会に参加することが必要である。
  • WCS Korea StandingはGSL、SSLおよびCloss Finalsにより構成される。それぞれの大会は成績によりWCSポイントを付与する。
  • GSL,SSLの優勝者4人とWCSポイントランキングより上位4人がGlobal Playoffに進出する。

世界中のプレーヤーが参加可能であるが、韓国でのオフライン大会に出場する必要がある関係上、基本的には韓国選手が殆どとなるだろう。
Korea Standingで得られるWCSポイントはKorea Standing内でのみ比較される。WCS Circuit Standing選手とのポイントの比較は行われない。

GSL(Global StarCraft League)

GSLはAfreecaTVが主催するリーグである。去年までGOMTVが運営していたが2016年からはAfreecaTV運営となる。以下のような特徴を持つ。

  • 賞金総額2億3000万ウォンで、Season1,2と年2回開催予定である。
  • 予選によりCode A参加者を決め、Code A通過者32人がCode Sを戦う。(コードS上位8人は次シーズンのコードSスポットを得る)
  • 優勝者はGlobal Playoffへの出場権を得る。

長い歴史を誇るGSLである。今年はわずか2シーズンのみの開催だが、賞金額は大きく増加している。

SSL(StarCraft2 StarLeague)

SSLはSPOTVが主催するリーグである。2015年から始まった新しいリーグで、以下の様な特徴を持つ。

  • 賞金総額1億34000万ウォンで、Season1,2と年2回開催予定である。
  • 予選により本戦出場者16人を決める。本戦上位4人は次シーズンのスポットを得る。
  • 優勝者はGlobal Playoffへの出場権を得る。

こちらも今年はわずか2シーズンのみの開催となる。賞金額はやはり大きく増加している。
本戦出場者が16人という点は2015年から変更はないが、その前に行われていたChallenge Matchはまるまる無くなっているほか、本戦Ro16のグループリーグも無くなっている。

GSL & SSL Cross-Finals

Cross-Finalは今年から設けられる新しい大会である。以下のような特徴を持つ。

  • それぞれのシーズンにおけるGSL上位2人とSSL上位2人が出場する大会で、賞金総額3000万ウォン以上で行われる。
  • 通常の1vs1トーナメントに加えて、GSL vs SSLのアーコンモードマッチも行われる予定である。
  • 優勝者にはWCSポイントも与えられる。

GSL/SSLのシーズン削減を埋める形で設けられた大会であり、2大リーグそれぞれの上位者が戦う大会となっている。
アーコンモードでの試合が予定されている唯一のWCS公式大会となる。

KeSPA Cup

韓国唯一の短期大会であるKeSPA Cupは2016年も開催される運びで、WCSポイントが付与されることも判明した。

筆者の感想

WCS Korean Standingに関する筆者の感想を述べていく。
WCS Circuit Standingで海外シーンの復興のために韓国選手の海外大会出場を制限するなど韓国選手にとっては厳しい変更もあったが、韓国シーン全体の賞金額が増えていることは評価して良いだろう。
2015年の総額5億1540万ウォンから2016年は7億8800万ウォン以上とかなり増加しており、またCross-Finalの開催も有り、決して韓国シーンを軽視しているわけではないことが見て取れる。
ただ懸念は大きい。賞金総額は増えても、プレーの機会は大きく減っているからである。2015年はGSL,SSLともに3回行われたが2016年は2回ずつ。大会が少なければ多くの選手がプレーする機会が減ってしまうし、
予選時の調子が1年全体に大きく影響してしまう。韓国にはプロリーグがあるとはいえ年2回では大会が何もない期間も長くなり、海外大会への参加も出来ないとあっては選手もモチベーション低下も心配される。
幸いKeSPA Cupの開催は既に予告されているため、KeSPA Cupやその他の大会の新設等で韓国選手がプレーする機会を可能なかぎり確保することが必要となるだろう。
海外シーンの成長は重要だが、それで韓国シーンが縮小してしまっては意味が無い。

WCS Global Event

WCS Korea StandingとWCS Circuit Standingが完全に分かれたため、それらの選手同士が戦う機会がこのWCS Global Eventとなる。
1年の最後に行われるWCS Global Playoff及びWCS Global Final、そして大規模海外大会のWCS Global Eventsがそれにあたる。

WCS Global Events 7500

賞金総額$50,000以上で行われる大規模海外大会である。この海外大会はWCS Circuit event2500/5000と異なり、WCS Circuit Standing,WCS Korea Standingどちらの選手も参加可能である。

WCS Global Playoff

WCS Circuit Standingから8人(WCS Circuit Championship勝者3人+ポイント上位者5人)、WCS Korea Standingから8人(GSL/SSL勝者4人+ポイント上位者4人)が参加する1年最後の大会である。
Blizzconの前の週に行われ、WCS Circuitから2人,WCS Koreaから2人の4人グループを4つ作成しグループステージを行い、勝ち抜いた8人がWCS Global Finalに進出する。

WCS Global Final

1年の最後を締めくくる最強のSC2プレーヤーを決める大会である。WCS Global Playoffを勝ち抜いた8人の選手がBlizzconにて賞金総額$500,000、優勝賞金$200,000をかけて戦う。
賞金総額、優勝賞金ともに2015年から大きく引き上げられている。

筆者の感想

WCS Global Eventに関する筆者の感想を述べていく。
2013年から3年間でGlobal Final進出を果たした海外選手がわずか2人という自体はBlizzard自身も重く見ていたようで、それが今回の8人-8人のルールになったと思われる。
この数字の妥当性に関しては議論があるとは思うが、海外選手にも大舞台に進んで欲しいという明確な意図は伝わってくる。Playoffを突破しBlizzconでプレーする海外選手が出てくれば万々歳だろう。
また韓国選手の海外大会参加が制限されたことでWCS Global Event7500の有無は重要になってくるが、これが実際開催されるかどうかは完全に不透明である。

終わりに

今回のシステム変更はあまりにも膨大で、それゆえに賛否両論ある。
海外シーン形成のためには良いシステムだという声。なぜ実力で劣る海外選手を優遇し、8つもGlobal Playoffの枠を与える必要があるのか?という声。韓国シーンの縮小を懸念する声。海外大会の質の低下を懸念する声。
様々な声があり、全ての人を満足させるシステムを作るのは難しいだろう。海外選手が韓国選手かで立場は異なるし、大会のレベルか地元の選手の活躍か、視聴者も大会に求めるものはそれぞれ異なるからである。
ただひとつ言えるのは、この素晴らしいLegacy of the voidという最終拡張に合わせて、Blizzardは本気で海外シーンを大きくしようという意図を持ってこのシステムを創ったということである。
SC2が長く続くEスポーツになるためには、海外シーンの活性化は間違いなく不可欠である。それは最終的に韓国シーンの盛り上がりにもつながってくるはずだ。
このシステムが上手くいくのかどうか、視聴者は、チームは、選手は、スポンサーはどういう評価を下すのか、2016年の終わりにはある程度答えが出ているだろう。
2016年がStarCraft2にとって素晴らしい年になることを祈って、記事の終わりとする。